ふるさとに生きる(寺沢・小櫃)vol.2

2024年1月30日千葉地方裁判所にて開廷された行政訴訟の場で、前年10月に引き続き、証人尋問が行われました。「ふるさとの水への想いと、産業廃棄物処分場に対する考え」を語っていただきました。ご本人の了承を得て要約版を掲載いたします。

なお、2024年5月17日の第23回行政訴訟においては、千葉県の証人喚問が行われます。多くの方に傍聴いただきますようお願いします。



金森春光 様

Q.現在のお住まいの住所はどちらですか。

君津市寺沢(小櫃地区)の実藏院に住んでおり、実藏院及び徳蔵寺の住職をしています。また、「ふるさとの水を守る会」の共同代表として活動しています。

Q.「ふるさとの水を守る会」はどのような活動を行っていますか。

「ふるさとの水を守る会」は、久留里地区のふるさとの水を守っていくために主に君津地区の住民により構成され、本件裁判の支援の主体組織としての活動を行っています。

Q.久留里地区の地下水について説明してください。

久留里地区は小櫃川などの河川(川底)が周辺の土地よりも低く、本来水資源が乏しい地域ですが、地下水は豊富であり明治時代に上総掘りにより深井戸の掘削が可能になったことから、明治時代以降自噴井戸群により地下水を活用した文化が形成されてきました。

自噴井戸から噴出する地下水は生活用水としての利用のみならず日本酒・豆腐等の製造及び畑や水田の水源として広く活用されています。また、カラー(花卉)栽培には豊富で年中水温の一定なこの地下水を活用しており全国一の生産量となっています。

Q.久留里地区の自噴井戸より得られる地下水は広く知られているのですか。

久留里地区の自噴井戸群は生活に欠かせないため歴史的に文化として大切に継承されてきました。このような背景により、「久留里の生きた水」として平成20年に千葉県で唯一環境省による「平成の名水百選」に選ばれています。

また、久留里にはこの地下水を求めて観光客が多数訪れ貴重な観光資源となっています。特に久留里駅前の水汲み広場にある自噴井戸は深さ約670mで、大量の地下水が常に湧き出ており多くの観光客が名水を求めて訪れています。

Q.上総掘りの歴史を説明してください。

上総掘りは明治時代に久留里地区の川田村において大村氏が中心となって確立した技術であり、大規模な設備を使用しないで大深度の井戸を掘ることが出来る手法です。久留里地区には地下水を豊富に含んだ地層が地下にあるため自噴井戸として地下水を大量に噴出しており、これまで農業地として活用できなかった場所が畑や水田となり困窮していた地域が豊かになりました。

本件廃棄物処分場はこの地下水源に築かれており、有害物を含む汚染水の漏洩により貴重な地下水の汚染が危惧されています。

Q.本件廃棄物処分場は水道の水源地にあるのですか。

本件廃棄物処分場は小櫃川及び小櫃川に合流する御腹川の水源地に建設されています。小櫃川の下流には大寺浄水場などがあり、君津地区4市(君津市、袖ヶ浦市、木更津市、富津市)及び県営水道にも水道水を供給しています。

Q.徳蔵寺の井戸は何時頃掘られたのか、またどのように井戸水を使用していますか。

徳蔵寺の井戸(写真の井戸)は境内に大正10年に掘られた自噴井戸です。深さは200間(約360m)であり、噴出量は3斗/分(約54L/分)程度でしたが現在は減少して2斗/分(約36L/分)ほどです。

以前は地下水をすべての生活用水としていました。平成10年に水道水を屋内に引き込むように改修していますが、現在でもろ過した井戸水を沸かして飲み水として使用しています。

Q.徳蔵寺に導かれている水道水は地下水を使用していますか。

徳蔵寺に供給されている水道水は愛宕浄水場で浄化されていますが、水源として地下水を使用しています。本件廃棄物処分場より約9kmの距離であり汚染水の漏洩は水道水として使用している地下水の汚染となることが危惧されているので水道水の汚染を心配しています。

Q.裁判の尋問として言っておきたいことがあれば述べてください。

令和元年に強烈な暴風を伴う台風があり、約2週間断水及び停電が発生しました。この時に水道水が供給されずタンクで生活のために必要な水を確保していましたが、トイレにタイク一杯の水が必要であるなど水の必要性を実感しました。この時に地域には自噴井戸による地下水があることによりなんとか耐えることが出来ました。

水を使用したいだけ使用できる状況があたりまえだと思っていましたが、清らかな水は自然の恵みとして、古くから大切に守られてきたものであり、これからも守り抜くことが必要であることを痛切に感じました。

これが、水源地に築かれている本件廃棄物処分場の許可の取消及び第Ⅰ期処分場の撤去を求める活動の動機となっています。適切な判決をお願いします。

【裁判官より】徳蔵寺では井戸水をどのように使用しているのですか。

徳蔵寺では屋内で井戸水を炊事用以外の生活用水として使用しています。また、近くの水田に地下水を供給しています。周辺の多くの水田は自噴井戸からの地下水を活用しています。

【裁判官より】「ふるさとの水を守る会」はどのような会ですか。

新井総合施設㈱が久留里の名水として知られている地下水及び君津地区の水道の水源地に大規模な廃棄物処分場を築くことが明らかとなったことから、土地改良区及び地域の自然保護活動を行っている複数の住民組織が統一して水源の保全のために廃棄物処分場建設に反対していくために結成した組織です。


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